相続財産に借金がある場合~相続放棄と限定承認の違い~
相続が発生した際、故人に借金があることが判明するケースは少なくありません。
このような場合、相続人は相続放棄か限定承認のいずれかを選択することで、負債のリスクを回避できる可能性があります。
本記事では、相続放棄と限定承認の制度内容、手続きの違いなどについて解説します。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が被相続人の権利義務を一切承継しないことを意思表示する法的手続きです。
民法第939条に基づき、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続放棄が受理されると、その相続人は初めから相続人でなかったものとみなされ、プラスの財産も負債も一切承継しません。
手続きは相続人各自が単独で行うことができ、他の相続人の同意は不要です。
申述には収入印紙800円と郵便切手代が必要で、比較的費用負担は軽いといえます。
相続放棄は借金などの負債が明らかに多い場合に有効な選択肢ですが、一度受理されると原則として撤回できないため、慎重な判断が求められます。
限定承認とは
限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内でのみ被相続人の債務を弁済する責任を負う制度です。
民法第922条に規定されており、相続人は相続財産を超える債務について弁済する義務を負いません。
限定承認は、相続人全員の合意を得たうえで、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
手続きでは相続財産清算人の選任が必要となる場合があり、官報への公告費用なども発生します。
2023年4月1日施行の改正民法により、従来の相続財産管理人制度が相続財産清算人制度に名称変更されました。
費用は相続放棄よりも高額になる傾向があります。
限定承認は、借金があるものの先祖代々の不動産など手放したくない財産がある場合や、相続財産の全容が不明確な場合に選択されることがあります。
相続放棄と限定承認の違い
相続放棄と限定承認の違いとして以下が考えられます。
手続きの性質の違い
相続放棄は相続人が単独で行える行為ですが、限定承認は共同相続人全員が共同で申述しなければなりません。
民法第923条により、相続人のうち1人でも反対すれば限定承認は成立しないため、相続人間での意思統一が必要です。
この点が実務上、限定承認の利用が少ない理由となっています。
一方、相続放棄は他の相続人の同意を必要とせず、自分の意思だけで手続きを完了できる点が大きなメリットといえます。
手続きの複雑さと費用
相続放棄は申述書類を家庭裁判所に提出し、受理されれば手続きが完了します。
一方、限定承認では相続財産の目録作成、相続財産清算人の選任、官報公告、債権者への弁済など複雑な手続きが必要です。
費用面でも、相続放棄が800円程度の収入印紙で済むのに対し、限定承認では官報公告費や清算人への報酬など数十万円規模の費用がかかる可能性があります。
手続きの期間も限定承認の方が長期化する傾向があり、場合によっては半年以上かかることもあります。
相続放棄と限定承認のどちらを選ぶべきか
相続放棄と限定承認のどちらを選ぶかは、相続財産の内容と相続人の意向によって異なります。
負債が明らかに財産を上回り、特に残したい財産がない場合は相続放棄が適しています。
単独で手続きでき、費用も安く、手続きも比較的簡単です。
一方、借金の額が不明確であるものの、どうしても手放したくない財産がある場合や、最終的にプラスの財産が残る可能性がある場合は限定承認を検討する価値があります。
ただし、共同相続人全員の同意が必要であること、手続きが煩雑で費用がかかることを考慮しなければなりません。
いずれの選択も相続開始を知った日から3か月以内という期限があるため、早期に財産調査を行い、弁護士に相談することが重要です。
期限を過ぎると単純承認したものとみなされ、負債も含めてすべてを相続することになるため注意が必要です。
まとめ
相続財産に借金がある場合、相続放棄と限定承認という2つの選択肢があります。
相続放棄は単独で手続きでき、費用も安く済みますが、すべての財産を放棄することになります。
限定承認は相続財産の範囲内で負債を弁済するため、財産が残る可能性がありますが、共同相続人全員の同意が必要で手続きも複雑です。
どちらの制度も相続開始を知った日から3か月以内という期限があり、期限を過ぎると単純承認したものとみなされ、負債も含めてすべてを相続することになります。
相続財産の調査には専門的な知識が必要な場合も多く、適切な選択をするためには早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
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〈 東京弁護士会/日本弁理士会 〉
弁護士 冨永 博之
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- 経歴
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- 香川県東かがわ市出身(昭和22年3月17日生)
- 昭和46年3月 東京大学工学部船舶工学科修士課程修了
- 同年4月 佐世保重工業株式会社入社(昭和62年10月に退社するまで、大型船の船型設計、開発に従事)
- 平成7年4月 弁護士登録(47期、登録番号24031)、野上法律特許事務所入所
- 平成15年2月 弁理士登録(登録番号12680)、冨永法律特許事務所設立
- 平成7年4月~現在 東京弁護士会知的財産法部会所属
- 平成12年4月~令和2年3月 (民暴委員)
- 平成16年4月~平成30年3月 (調停委員)
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- 著書
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- 知的財産権用語辞典(共著) 日刊工業新聞社
- 知的財産法重要判例(共著) 学陽書房
- 不正競争の法律相談(共著) 学陽書房
事務所概要05
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